凍える惑星

絵を描いたり文を書いたり

メモ11/16

最近読んだ本。

・変形菌(Graphic voyage)

・教養のための昆虫学

・ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト:最新科学が明らかにする人体進化35億年の旅

 

また読書感想書こうと思ったものの、小説ではない一般書はなかなか書き難いというか、感想…?

内容を整理するためにも要約なんか残したいな。

 

あと、以前からちょくちょく短編のアイデアを書き残しては「時間があるときに完成させよう」と後回しにしていたものが結構溜まっているので、いい加減それも進めたい。

 

やりたいことだけが溜まっていく…。

 

 

読書感想:どんがらがん

※以下ネタバレあり

 

漫画「バーナード嬢曰く」で紹介されていた『さもなくば海は牡蠣でいっぱいに(旧題:あるいは牡蠣でいっぱいの海)』が以前から気になっていたのですが、ようやく読むことができました。

てっきり長編かと思ったのですが短編だったんですね。

作者のアヴラム・デイヴィッドスンの作品を読むのは今回が初です。どうやらSFだけではなく、ミステリーやファンタジーも書いておられた方(というかこれが中心だったみたい)らしく、今作「どんがらがん」もいろいろなジャンルの短編集となっていました。

今作の感想を一言で言うと、奇妙というか奇天烈というか、ユーモアのある話もありましたが、なかなか理解の難しい話が多かった印象。というか、私には合わなかったですね…。面白くなかったというわけではなく、好みに合わなかったというだけです。かなり内容が理解し難く、私の理解力も落ちたなあなんて思いながら読み進めていたのですが、どうやら原文がすでに悪文と言われるような読みにくい文だったらしく、訳者を通しても難しいものは難しいみたいです…。

 

以下、各タイトルごとの雑な感想。

 

◯ゴーレム

人類に敵意を向けるロボット(人造人間?)がある老夫婦と出会う話。ロボットは会話をしようとするのだけど、自分達の思うがまま喋り始める老夫婦のせいで、全く話が噛み合わないところが面白かった。そしてあっさり人類救済。

 

◯物は証言できない

黒人の奴隷商人の話。黒人は人ではなく物、馬が飼い主の所有物であるように、黒人もまた主人の所有物でしかない、なんて言うクズが最後に痛いしっぺ返しを食らうのはまさに因果応報というやつですね。

 

◯さあ、みんなで眠ろう

面白かった短編の1つ。人類と姿が似ていながら知能が低いため酷い扱いを受ける異星人ヤフーを何とか救おうとする主人公だが…。人はどこまで非道になれるんだろうか。雌のヤフーがそういう扱いを受けていると作中にあったのですが、いくらなんでも似てるからって原始人みたいな生き物と、しますかねえ…。男の性欲の恐ろしさよ。どっちが野蛮人か。

しかし、救われない最後だな…。

 

◯さもなくば海は牡蠣でいっぱいに

こちらも面白かった短編。海に関する話かと思ったら全くそんなことはなかったぜ。ハンガーがいつのまにか増えているというアイデアからこんな話にまで膨らませるのかと脱帽(ハンガー増えるか?と思いましたが、そういやクリーニングに出したらハンガー付いてくるので、暫く買ってないな…)。日常の一部として特別意識される事なく忘れ去られるような出来事が、実はある擬態生物による仕業だとしたら…?

 

◯ラホール駐屯地での出来事

寝取られた!死んだ!恋愛が絡むと人間て怖いなあ!結婚した!実は黒幕だ!恋愛が絡むと人間て怖いなあ!

 

◯クィーン・エステル、おうちはどこさ?

語り部が良い。

 

◯尾をつながれた王族

何かの暗喩かと思ったのですが、単純に架空生物の生態のお話だったみたい。

 

サシェヴラル

これ結構好きでした。内容自体はそこまで何ですが、お猿さん(?)の台詞とか誘拐犯との会話とかが個人的に良かったです。

 

◯眺めのいい静かな部屋

人間って怖いなあ。

似たような話をネットで見たなあなんて思ったのですが、もしかしたらこれが元ネタだったりしたのかも。

 

◯グーバーども

ただの作り話のはずがまさかの実在。ピーナッツが本当に出てきたところで笑ってしまいました。

 

◯パシャルーニー大尉

なかなか非情な話が続く中、ここに来て人情話。

 

◯そして赤い薔薇一輪を忘れずに

この本で一番好きな短編です。古本屋の主人から招かれた主人公は、貴重な古書の数々を目にする。それらの本は、同等の価値のある品でしか購入(交換)することができなかった。最後にタイトルの意味が分かる展開っていいですよね。古書の紹介内容や購入条件にロマンがある。

 

ナポリ

全く…理解…できませんでした…。何が起こってるんだ…。

 

◯すべての根っこに宿る力

人間って怖いなあ(何度目だろうか)。

最後に全ての真相が分かったんですが、人間不信に陥りそうですねこれ。主人公の哀れさよ…。

 

◯ナイルの水源

感想が上手いこと出せなかった作品。面白かったんですけど、嫌な感情が残った。

 

◯どんがらがん

すごいという程ではなかったですが、なかなか面白かったです。中世っぽい世界観だなあと思ったのですが、作中に出てくる<大遺伝子転移>というワードや、自由の女神像らしき巨像、呪法という名の化学とか、どうも一度文明が滅びた後の話らしい。こういうのいいですよね。

オチは途中から読めたのですが、正直そういう結末にするとは思いませんでした…。

読書感想:くらやみの速さはどれくらい

※以下ネタバレあり

 

二十一世紀の「アルジャーノンに花束を」と謳われていたので、以前からずっと読みたいと思っていたのですが、ずっと後回しになっていました。

というのも、「アルジャーノンに花束を」は何年も前に読んでいたのですが、内容がなかなか精神的に辛くてですね…。小説を読んでこんなに泣くことはないだろうというくらい号泣しまして、普段小説を読まない人に勧めたい図書上位に入るレベルで名作だと個人的に思っています。しかし、主人公に対する容赦ない展開に精神的負荷がものすごいかかってしまいました。なので、今作もおそらく素晴らしく面白いのだろうけど、その分とても辛くなってしまうのではと思い、なかなか手が出せないでいました。

 

実際読んで思ったのですが、これ紹介文に「アルジャーノンに花束を」を載せいないほいがいいのでは…。

確かにアルジャーノンのように障害を抱えた主人公(今作では自閉症)を中心に物語がすすみ、健常者になれる治療を勧められ…という流れではあるのですが、似たところはここぐらい。

まず、健常者になる治療を受けるまでが長い。というか、メインの話が自閉症を抱えて生きていく場面で、治療を始めるのはラスト50ページほどです。そして治療後はあっさりと描かれて終わり。想像してたのと違った…。

アルジャーノンに花束を」では、障害を抱えた主人公が治療を受けた結果、知能面で目覚ましい成長を遂げるのですが、反面、変わってしまった自分自身のこと、知らなかったことを知ってしまったことなどの新しい問題に直面することになります。そしてあの救われないラスト…。

「くらやみの速さはどれくらい」では、治療が成功し、健常者と同じ思考と行動を手に入れた主人公は、自閉症の頃には絶対に不可能だった夢を叶えることができ、本当に幸せそうです。その代わり、自閉症だった頃に好きだったモノには興味を失ってしまいます。あんなに好きだった人に再会しても何とも思わない。しかし、本人は気にする様子もないです。それよりも希望溢れる自分の未来に期待と夢を膨らませます。彼は治療を受けたことにとても満足している状態です。あの終わり方的に、恐らく彼は夢を叶え、幸せに満ちた人生を送るように思います。

主人公は確かに変わった。しかし、何か問題があるのでしょうか?彼は変わってしまったことに何の後悔も感じていません。

むしろ変わったことを1番気にしてるのは周囲人間でした。自閉症でありながらも、主人公には主人公の考えがあると個人を尊重し、得意なことといった個性を認めていた彼らが、治療を受けることに慎重でした。

 

結局人間どうあるのがいいのか。個性なんてのは何なのでしょうね。

 

読書感想:絡新婦の理

※以下ネタバレあり

 

とある宿の座敷で女が殺されていた。女の両眼は無残にも潰されていた。巷間を轟かせる連続殺人犯『目潰し魔』による第四の殺人だと考えた木場は、犯人を捕まえるべく捜査を始める。一方その頃、基督教系の女学校である聖ベルナール女学院では、生徒の間で黒い聖母の噂が囁かれていた。



女権拡張主義者の2人が死に、最後に社会の隙間に収まって自我を押し殺してきたような女性が生き残ったことについて、どういう感想を述べるべきか分からない…。

いや、フェミニズムどうこうの話ではなく今回のラスボス:茜が本当はどういった人なのか、本当は何を考えて生きてきた人なのかがはっきりと分からなかったというだけのことなんですけども。

自分の居場所を手に入れるため、茜は今回の計画を実行したそうですが…。

茜は過去にR・A・A(駐屯米兵用の廓らしい)で娼婦をやっていたそうで、作中に「元学生と云う娘の三人で…」とありますが、これは茜のことでしょうね。そこで働いていた理由は学費のため(かあるいは単純に生きていくためか)でしょうが、結局R・A・Aはすぐに崩壊して路頭に迷ってしまう。どんな理由であれ結局は娼婦。元の生活に戻るのも難しい。人に言えるような経験ではない。彼女はその時代を己なりに生きようとしたが、結局は何もかも失ってしまった。そもそもベルナール時代にある教師に凌辱され心に深い傷を負っているし、成長する過程で織作家の秘密も知ってしまってるでしょうし、時代に振り回され、他人からも否定され、なかなかに重い人生…。

茜にとっての自分の居場所とは、文字通りの意味だけでなく、もう傷つくことなく安心して暮らせる場所という意味でもあったのだろうな。

そういう流れを踏まえて読むと、彼女の行為、いや結果は、社会に対する復讐、あるいは反撃のように思える。でもさすがに犠牲者が多すぎるよ…。冒頭の桜のシーンを読むに、結局こんなことは望んでなかったみたいだし、救われないなぁ…。

 

でも、本当に面白かったです。読み終わってからも所々読み直したり、感想を読み漁ったりと、読み終えたことがただ寂しい。読後もしばらくの間内容を反芻する本にはあまり出会わないように思います。いや、いつも読んでる本が面白くないというわけではなく、いつもは「読み終わった!面白かった!よし、次!」みたいな、スピード優先みたいな読み方をしているので…。今回は次の本を手に取るより、暫く余韻に浸っていたいと思ってしまいました。

今作は1400ページ程あり、かなりの大長編。でも前作と比べてかなり読みやすかったように思います。専門学的な部分も特に難しいとは感じませんでしたし。

しかし、読んでる最中に手に感じる重みよ。文庫本とはいえ、素晴らしい鈍器っぷり。

 

今回の物語で初めて榎木津を頼もしいと思いました(笑)。

関口くんは読んでも読んでも読み進めても出てこなかったので、とうとう左遷でもされたのかな?と思っていましたが、最後に出てきましたね…。待ってたよ…。

緻密に練られたストーリー、各々の事件が一つに収束していく流れ、謎の解明、憑き物落としが始まってからの展開には本当に鳥肌がたったのだけれど、正直終盤の織作家での殺人連鎖は笑ってしまった。まだ人が死ぬか。もう無茶苦茶。

自分の手は汚さず、他人に代行させる茜さん、まるでモリアーティみたいですね。

茜といえば、結局父親が誰かは分からずのまま。他所様の考察では呉仁人ではないかとありましたが…。そもそも父親の正体解明は必要ないのではないか。というか作中には登場していないような気がする。

 

(以下、大極宮より)

Q5. 織作茜の父親が誰なのか、はっきり分かるように教えて下さい。

       文庫版では分かるようになるのでしょうか?(mikeneco)

A5. 何故お知りになりたいのでしょう?

       作品は出版された形で完成しているのです。

       作者の中に答えがあっても、書かれていないなら「ない」のです。

       テキストに書かれていない部分を作者に聞くのは、僕は反則だと思います。

 

ないんですね、分かりました。

(正直、茜の父親より、蜘蛛の館がなんであんな造りをしているのかが1番知りたい。説明ありましたっけ…?)

 

この『絡新婦の理』、地元の本屋になく、Amazonで買おうと思ったら送料込みで高くなるわ、届くのに1週間かかってしまうわで、結局片道1時間半の距離を車で走って大きい本屋さんまで買いに行きました。

いやぁ、買ってよかった。

(感想書き終えた頃にもう一度Amazonを覗いたら、primeで買えるようになってました。タイミングの悪さよ…)