読書感想:どんがらがん
※以下ネタバレあり
漫画「バーナード嬢曰く」で紹介されていた『さもなくば海は牡蠣でいっぱいに(旧題:あるいは牡蠣でいっぱいの海)』が以前から気になっていたのですが、ようやく読むことができました。
てっきり長編かと思ったのですが短編だったんですね。
作者のアヴラム・デイヴィッドスンの作品を読むのは今回が初です。どうやらSFだけではなく、ミステリーやファンタジーも書いておられた方(というかこれが中心だったみたい)らしく、今作「どんがらがん」もいろいろなジャンルの短編集となっていました。
今作の感想を一言で言うと、奇妙というか奇天烈というか、ユーモアのある話もありましたが、なかなか理解の難しい話が多かった印象。というか、私には合わなかったですね…。面白くなかったというわけではなく、好みに合わなかったというだけです。かなり内容が理解し難く、私の理解力も落ちたなあなんて思いながら読み進めていたのですが、どうやら原文がすでに悪文と言われるような読みにくい文だったらしく、訳者を通しても難しいものは難しいみたいです…。
以下、各タイトルごとの雑な感想。
◯ゴーレム
人類に敵意を向けるロボット(人造人間?)がある老夫婦と出会う話。ロボットは会話をしようとするのだけど、自分達の思うがまま喋り始める老夫婦のせいで、全く話が噛み合わないところが面白かった。そしてあっさり人類救済。
◯物は証言できない
黒人の奴隷商人の話。黒人は人ではなく物、馬が飼い主の所有物であるように、黒人もまた主人の所有物でしかない、なんて言うクズが最後に痛いしっぺ返しを食らうのはまさに因果応報というやつですね。
◯さあ、みんなで眠ろう
面白かった短編の1つ。人類と姿が似ていながら知能が低いため酷い扱いを受ける異星人ヤフーを何とか救おうとする主人公だが…。人はどこまで非道になれるんだろうか。雌のヤフーがそういう扱いを受けていると作中にあったのですが、いくらなんでも似てるからって原始人みたいな生き物と、しますかねえ…。男の性欲の恐ろしさよ。どっちが野蛮人か。
しかし、救われない最後だな…。
◯さもなくば海は牡蠣でいっぱいに
こちらも面白かった短編。海に関する話かと思ったら全くそんなことはなかったぜ。ハンガーがいつのまにか増えているというアイデアからこんな話にまで膨らませるのかと脱帽(ハンガー増えるか?と思いましたが、そういやクリーニングに出したらハンガー付いてくるので、暫く買ってないな…)。日常の一部として特別意識される事なく忘れ去られるような出来事が、実はある擬態生物による仕業だとしたら…?
◯ラホール駐屯地での出来事
寝取られた!死んだ!恋愛が絡むと人間て怖いなあ!結婚した!実は黒幕だ!恋愛が絡むと人間て怖いなあ!
◯クィーン・エステル、おうちはどこさ?
語り部が良い。
◯尾をつながれた王族
何かの暗喩かと思ったのですが、単純に架空生物の生態のお話だったみたい。
◯サシェヴラル
これ結構好きでした。内容自体はそこまで何ですが、お猿さん(?)の台詞とか誘拐犯との会話とかが個人的に良かったです。
◯眺めのいい静かな部屋
人間って怖いなあ。
似たような話をネットで見たなあなんて思ったのですが、もしかしたらこれが元ネタだったりしたのかも。
◯グーバーども
ただの作り話のはずがまさかの実在。ピーナッツが本当に出てきたところで笑ってしまいました。
◯パシャルーニー大尉
なかなか非情な話が続く中、ここに来て人情話。
◯そして赤い薔薇一輪を忘れずに
この本で一番好きな短編です。古本屋の主人から招かれた主人公は、貴重な古書の数々を目にする。それらの本は、同等の価値のある品でしか購入(交換)することができなかった。最後にタイトルの意味が分かる展開っていいですよね。古書の紹介内容や購入条件にロマンがある。
◯ナポリ
全く…理解…できませんでした…。何が起こってるんだ…。
◯すべての根っこに宿る力
人間って怖いなあ(何度目だろうか)。
最後に全ての真相が分かったんですが、人間不信に陥りそうですねこれ。主人公の哀れさよ…。
◯ナイルの水源
感想が上手いこと出せなかった作品。面白かったんですけど、嫌な感情が残った。
◯どんがらがん
すごいという程ではなかったですが、なかなか面白かったです。中世っぽい世界観だなあと思ったのですが、作中に出てくる<大遺伝子転移>というワードや、自由の女神像らしき巨像、呪法という名の化学とか、どうも一度文明が滅びた後の話らしい。こういうのいいですよね。
オチは途中から読めたのですが、正直そういう結末にするとは思いませんでした…。